特定非営利活動法人 北海道自然エネルギー研究会

会長からのメッセージ


2016年6月の総会で会長に選出された日下です。初代浦野会長,第2代池田会長に引き続き就任いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。

 自然エネルギーは,「太陽エネルギーの流れと地球の運動によって毎年その地域に周期的に生み出される,安全でクリーンなエネルギー」と定義されます(自然エネルギーと環境の事典; NPO法人北海道自然エネルギー研究会,2014)。これは少し長く覚えにくいので私は,「太陽と地球の活動・運動で繰り返し生み出される安全なエネルギー」と普段使っています。

 ところで産業革命以降,エネルギー源としての化石燃料の消費量は飛躍的に増大し,燃焼による二酸化炭素が大量に発生し,地球温暖化の原因と指摘する科学者も少なくありません。さらに,石油・石炭などの燃焼で排出される硫黄酸化物や窒素酸化物による大気汚染も,1960年代には日本で,現代では新興国でその被害が広がり,世界的に大きな問題となっています。さらに,スリーマイル島・チェルノブイリ・フクシマ原発事故が繰り返し発生し,原子力と人類は共存できないという考え方が,広まりつつあります。 こうした状況の中で,化石燃料・原子力に変わるものは自然エネルギーと捉えられるようになってきたのです。しかしながら日本では,福島を置き去りにするかのように,原子力発電の再稼働が進められ,今の自分さえよければ後はどうでもよい,と発電会社や政府は考えているように思えてなりません。

 そこで人にとってエネルギーとは何なのか,長い歴史の中で考えてみます。ヒトは火(エネルギー)を手にすることで暖と安心を得,人たりえたのです.火を使い動物から身を守り,獲物を煮炊きすることで,それまでの生食に比べて食するものの量と質・種類が飛躍的に増え,消化・吸収が大きく向上し,脳も身体も発達したのです。他方,火の活用からエネルギーの効率化が進み,大型火力発電所ができると,火を見ることはできても,手で触れることはできなくなりました.原子力発電所ができると,火は触れることも見ることもできなくなってしまいました.人と火(エネルギー)が切り離されたのです. こうしたことを踏まえてもう一歩進めて考えると「自然エネルギー活用とは,大量生産・大量消費・大量廃棄というこれまでの生活を見つめ直すこと」ではないか,と私は思うようになりました.

 大量生産・大量消費の本家本元のアメリカは,少なくともエネルギー分野でその脱却を図ろうとしています.2003年北アメリカ大停電,2005年ロスアンゼルス大停電を経て,大型ダム式発電の廃止宣言へと進んだのです。 「自然エネルギー運動とは,食とエネルギーを自らの手に取り戻すこと」ではないか,と私は考えています.自然エネルギー活用は,古来からの人間の生活そのものであり,自然エネルギー活用には私たちの暮らしを根本から問い直す,という必然が内包されているのです。

 したがって,自然エネルギーは原子力や化石燃料の代替エネルギーという一面のほか,より根本的に私たちのエネルギー観,生活観,暮らしそのものを問い直しているといえます。大量生産・大量消費・大量廃棄という価値観から,人間らしい本来の生活リズムへと,復権の鼓動が感じられるのです。  このように,少し思考のインターバルを広げ,歴史的に私たちの暮らしやエネルギーを見つめ直すことも大切ではなかろうかと考えます。

 私たちNPO法人北海道自然エネルギー研究会には学者・研究者・技術者の他,農業者や酪農家,主婦や教師・学生,企業家やマスコミ関係者まで,あらゆる分野から老若男女が集い活動しています.NPO法人として14年を経過し,会誌「北海道 自然エネルギー研究」も12号が発行されました。 NPO法人北海道自然エネルギー研究会が,北海道の日本の自然エネルギー研究・実践の中核として大きく貢献できるよう,その中心となって活動したいと思います。ぜひ,我々の活動に参加・ご協力下さい。

2019年3月2日
会長 日下 哉


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